エピシル口腔用液について

先日総合病院の方から、がんの化学療法中で口内炎の副作用で困っており
歯科でエピシル口腔用液の処方ができないかとお尋ねがありました。

お調べしたところ、2017年7月に承認された比較的新しい医療機器で
現時点では歯科でしか処方できないもののようでした。

エピシルは、脂質ベースの液体で口腔粘膜を覆う強固な生体接着保護膜を形成し、
患部を物理的に保護するといった作用機序を有する初の医療機器です。

使用は簡単で、ノズルヘッドをプッシュして口腔内に塗布します。
その後舌を用いて、口内炎の患部に塗り拡げます。
適用後は5分程で口腔内の疼痛が緩和し、その効果は8時間程度持続するとされています。
1日の使用回数は、必要に応じて1日2~3回使用できます。
携帯に便利なポケットサイズの容器(10ml)に充填されていますので、痛みが出てきたらすぐに使えます。

注意すべき点として、継続して使用する場合の上限が30日と定められている点や
がん治療前後に生じる口内炎に対してしか処方できない点などがあります。

高齢社会となり、がんは治る病気となっていますが
日々の訪問診療や外来へ周術期口腔管理で来院される方を診療していると
手術だけでなく抗がん剤による化学療法や放射線治療などでも副作用による大変さがあると
感じる機会が増えています。

歯科でできることは限られていますが、お身体の状態を悪化させず、免疫力を高めた状態で全身疾患の治療に望んでいただけるような歯科治療を心がけています。

今回ご紹介したエピシル口腔用液をご希望の患者様がいらっしゃいましたら
かかりつけの歯科の先生にご相談されることをお勧めします。
その際、がん治療をしてくださっている医科の先生からの歯科への診療情報提供文書が必要となります。
手術や抗がん剤、放射線などがん治療の内容や実施又は予定日を簡単に記載しておいて頂くと良いようです。

歯科診療所とお付き合いのある一般的な薬屋さんにお願いしたら
在庫があれば当院のような歯科診療所でも速やかに納品していただけました。
製造元のサイトも記載しておきます。
https://solasia.co.jp/products/episil.html

今回はこちらも大変勉強になったのでご紹介させて頂きました。
抗がん剤の種類によって、口の中の粘膜のよく動かす部分や
あまり動かさない部分に口内炎ができやすい等の違いもあるようです。
いずれも辛く、楽しみなお食事に支障が出たりするようです。
歯科医院として少しでも穏やかにお過ごしいただけるお役にたてたらと考えています。
療養中のみなさまどうかお大事になさってください。